青年海外協力隊ブログの危うさ

記事の目的

この記事の目的は、青年海外協力隊OBである私が青年海外協力隊の存続を危惧したために書いたものであり、現在、あるいは未来の青年海外協力隊への提言でもある。

記事を書いたきっかけ

私は青年海外協力隊OBであるが、私が青年海外協力隊として派遣された頃はちょうどSkypeが出たくらいで現在のような多様で、便利なSNSがあった訳ではない。Skypeがあったと言っても現在のような良質なサービスを提供している段階ではなく、ましてやネットの普及などされていない途上国に派遣されていたので、使い物になるようなものではなかった。現在は後輩の青年海外協力隊の活動を簡単にSNSを通して知り、青年海外協力隊を誇らしく思えている私は技術発展の恩恵を受けている一人であることは間違いない。そんな日々で若い世代を中心に流行しているようなものが、「ブログ」というものである。私たちの青年海外協力隊世代では、日々の活動を日記に収め、活動の反省や目標を書き示すためにも日記を書いていた隊員がいた。つい最近まで私たちの日記が、デジタルになったものが「ブログ」だと思っていたのだが、よく調べてみるとどうやら違うらしい。現在では、ただ単に自分の活動を記述している、我々の「日記」のような青年海外協力隊のブログだけでなく、ブログというのは日記以外の目的(利益追求や自己顕示など)が付加された、我々の日記と一線を画すものが存在し、その一線を画するブログが青年海外協力隊の存続を危ぶませる恐れがあると強く感じ、青年海外協力隊OBとして警笛を鳴らす決心を決めた。

 

青年海外協力隊ブログの種類

既に述べたように、青年海外協力隊ブログには二種類のブログが存在する。一つ目はアナログな日記を、単にデジタルにした「日記ブログ」。もう一点は、日記とは一線をが画する、お金儲けや自己顕示を目的とした「商用ブログ」。当記事では後者の「商用ブログ」の問題点を浮き彫りにする。

 

この記事に関すること

どんな記事を書こうとも、記事内容は間違いなく筆者の主観である。しかし、少しでも客観性を増やすために、異なる国に派遣された青年海外協力隊の6名のOBOGに意見を求めて、複数のブログを例にこの記事を作成した。

協力者:青年海外協力隊OBOG

青年海外協力隊OB4名(アジア①、大洋州、中南米①、アフリカ)

青年海外協力隊OG2名(アジア②、中南米②)

商用ブログ例

1.南米の元青年海外協力隊OBのブログ

2.南アジアの現役青年海外協力隊ブログ

3.東アフリカの現役青年海外協力隊ブログ

4.南米派遣予定の青年海外協力隊候補生のブログ

 

商用ブログ例に関する質問

Q1.これらのブログを知っていたか。

A:「知っている」2名、「知らなかった」4名

※「知っている」方の知ったきっかけ

・フェイスブックグループでシェアされてきた2名

 

Q2.記事は面白いと思うか。

A:「はい」5名、「いいえ」1名

 

※「はい」の理由

・記事や見出しがキャッチーで読みやすい

青年海外協力隊の頃を思い出す

※「いいえ」の理由

・内容が薄っぺらくて、頭に入ってこない

 

Q3.内容は事実と合っていると思うか。

A:「だいたい合っている」1名、「違うことが多い」4名、「全然違う」1名

「だいたい合っている」の理由

青年海外協力隊と関係のない記事が多く、そのことはよくわからないが、任国のことは合っているとは思う。

「違うことが多い」の理由

・主観的な意見が多くて、共感できることは少なかった。

・時期や任国が違うからか、ほとんど当てはまることがなかった。

・内容は面白いが、誇張や事実と異なることは多少なりともありそう。

「全然違う」の理由

・南米の方のブログの記事は、特に普遍的な事実として書かれているようだが、私の活動していた地域とは全然違っていた。

 

Q3.ブログに好感を持てるか。

A:「はい」1名、「どちらでもない」1名、「いいえ」4名

※「はい」の理由

・よく書かれているし、内容も面白い。青年海外協力隊を知ってもらえるのではないか。

※「どちらともない」の理由

・いろんな記事を書いていて幅があるのはすごい。だからこそ、青年海外協力隊を名乗る必要があるのかはわからない。これだけ書いていると、活動がおろそかになっているのではないかと心配になる。

※「いいえ」の理由

・国際協力の業界で働いているものとして、関わっていない者に国際協力を知ったような口調で語られるのは不快。

・人を惹きつけるタイトルをつけたり、記事内容は工夫されたり、コンテンツとしては面白いと思うが、青年海外協力隊ブログとしての目的はわからない。

・内容が青年海外協力隊の実態と遊離している。誤解されないか心配になるものも多々ある。

 

Q4.青年海外協力隊にとってプラスとなるブログであるか。

A:「はい」1名、「いいえ」5名

※「はい」の理由

・内容が面白いので、いろんな人が青年海外協力隊に関心を持ってくれそう。

※「いいえ」の理由

・繰り返しになってしまうが、事実と異なることが多いので、誤解されないか不安。

青年海外協力隊に対するリスペクトが欠けている。

青年海外協力隊の事実を語る程ではいるが、薄っぺらさや胡散臭さが漂う。

・個人的な意見を、青年海外協力隊の総意として書くのはやめてほしい。

 

商用ブログの問題点

・主観的意見を客観的意見のように書く

青年海外協力隊のこと < 記事の面白さ

 

主観的意見を客観的意見のように書く

こうしたブログの客観性の欠如は、以下の記事で詳細に述べられているので、こちらを参考にしていただきたい。

http://projectdprompt.hatenablog.com/entry/2017/05/04/000000


さらに、客観性の欠如により、事実と異なる記事を書いているようだ。

青年海外協力隊の派遣は2年間。途上国に二年間住むことになると、それなりの準備が必要であり、持ち物を購入するだけでもそれなりの金額となる。そこを狙ったのがこうした商用ブログの成功報酬型広告(アフィリエイト)である。成功報酬型広告は商用ブログの特徴の一つで、例えば、ある中南米の商用ブログでは、青年海外協力隊の持ち物一覧を紹介している。その中で、Amazonなどの通販サイトへのリンク(成功報酬型広告)を設置することで、そのブログを通して商品を買ってもらい、通販サイトからの報酬がもらえる仕組みになっているようだ。

彼らの目的は、未来の隊員のよりよい準備よりも自分たちの成功報酬を優先する。そのため、高額の商品や必要のない商品を勧める傾向になる。何も知らない未来の隊員をカモにしているわけだ。その理由として、この南米OBの「青年海外協力隊の持ち物一覧」を6名の青年海外協力隊員に見てもらったが、アジアやアフリカだけでなく、南米の隊員でさえも必要であるものはわずかであることがわかった。これが、彼の南米の国の赴任する地域の持ち物一覧として紹介しているならまだしも、青年海外協力隊の共通の持ち物のように紹介しているのには、こうした見えないカラクリが存在するからだ。青年海外協力隊の持ち物は時代や任国、地域によって大きく異なるのは言うまでもない。

 

 

青年海外協力隊OBOGの意見まとめ

・タイトルを工夫していて、内容も読みやすい。

・青年海外協力隊の事を知るきっかけにはなるかもしれない。

・彼らの優先事項は青年海外協力隊のことよりも自己顕示やお金儲け

・持ち物一覧で新隊員をカモに。新隊員のことよりも金儲けを優先

・主観的意見を客観的意見のように書く

・キャッチーなタイトルや関心を引くタイトルで内容を誇張する

・少なくとも、6名中5名の協力隊OBOGが協力隊との実態とは異なるブログ内容が書かれていると回答

・同じく、6名中5名の協力隊OBOGがこうしたブログは青年海外協力隊のためにはならないと思っている。

・こうしたブログには本業である活動に関する記事は出てこない。

・本当に頑張っている青年海外協力隊は陰ながらひたむきに活動をしているため、こうした記事を書くことはしないし、ましてや自己顕示をしない。

・活動の実績よりも、ブログの観覧数を気にしている。

・全てを知ったような口調。上から目線の意見。「青年海外協力隊の合格方法」を書かれているが、たった一度合格しただけで、面接官でもないのにそれを語るのは疑問。

・青年海外協力隊を批判したり、勧めたり、立場がよくわからない。

・定職に付かずにブログで生計をたてているため、青年海外協力隊のことよりもお金儲けを優先させてしまうという精神的な危うさを秘めている。

・アフィリエイトをしていたり、JICAが無料で行なっている青年海外協力隊に関する相談料を1時間3000円取っていたり、青年海外協力隊を利用したビジネスをしているのではないか。

 

青年海外協力隊を名乗るブログの方への提言

自らブログを書くことに何の意味があるのだろうか。利益追及や自己顕示は青年海外協力隊の本来の目的ではない。自分への問いかけであるならば、我々の時代に使用していた日記を利用すればいい。ブログを描きたいのであれば、JICAが用意した専用のブログがあるはずだ。なぜ、JICAのブログを利用しないのか、それを利用しない正当な理由があるのか。教えていただきたい。それに答えられないのであれば、少なくとも青年海外協力隊を名乗るようなことはして欲しくない。向き合うべきなのはパソコンの画面ではなく、現地の人とその生活である。


青年海外協力隊を名乗るブログに関する意見

様々な意見があると思うので、ぜひ、ご意見をお聞かせください。